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Life

あの深江の味角屋にいけた。そこには現代のノスタルジアがあった。

By 2024年3月5日No Comments

ある日ランチを終えて帰ってきた男女グループが少し興奮気味ですごい店を見つけたと話していた。

どうも聞くと親父さん一人で切り盛りしていて、カウンターに現金が並べられている。

それでみんな食べるとそこにお金をおいて帰っていくらしい。

ご飯も美味しいしボリュームもある。んでめちゃめちゃやすい。

調べてみるとたしかに安い。昔の昭和時代の値段。外観は知人からのおすすめがないと絶対入らない感じ。

彼らは深江のいろんなお店にいっては評価しあったりグルメな人たちなので

ポジティブな評価が気になっていつかは言ってみようとGoogle Mapに保存しておいた。

今日雨だったので電車でコワーキングスペースに行ってみると臨時休業だったことを知らずに行ってしまった。

雨もそこまでではなかったのとこの機会にランチ談義で気になっていたお店で昼飯食べて電車は使わず歩いて帰ることにした。

せや、あのお店に行ってみよう。店名は忘れていたけれど会話の記憶からだいたいの位置を思い出して発見。

深江駅から北東へ徒歩やく9分くらい。駅近くのパチンコやスーパー飲食店の多くエリアからは離れている。

ついた。

話やシステムからして会話の苦手で古風な親父が黙々とやっててこっちが気をつかうんやろうなとか勝手に偏屈な親父像をイメージしていた。

実際お店に向かって一見で注文から支払いができるかどうかも不安だった。なのでこの後は実際言ってみた感想とこれから行く人にイメージを掴んでもらえるよう記録しておく。

小雨なものの暖簾がたなびくくらいのすこし風のある日。

出入り口のドアに手を掛ける時に暖簾の後ろにある透明なガラスで中を見ようとしたが暗く、もしかして今日は閉店か!?と一瞬疑うも、天井の蛍光灯と中にいる人が見えたのでそのまま入店。12時前。

席はテーブル6個くらいまばらに座っていた。

入口手前の席が空いていたので荷物を置いて例のカウンターらしきところに近づいてみる。

本当にお金が並べられている!ここで払って注文かな?と思って覗き込んでいると

「おにいちゃんはなんにするぅ?」と覗き込んだ先に同じくこちらを見ているご主人がとても優しい声で尋ねてくる。

調べてから来ていたのでとりあえず名物らしきカツ丼を頼んだ。払おうとすると「後でいいよ後で」

そうなんや。と思っているとこちらがわかっていないのを察した様子で、カウンターの上にコップがあって、

そこから左奥のウォーターサーバーがあることを説明、「そこで水を入れてくれたら嬉しい」

多分、お店に行ったことのある人ならこの優しい言い回しと飾らない優しい声で話しかけてくれているのがわかる。

勝手に偏屈で接客嫌いの親父をイメージしていたのが違って、システムに乗れるかびびっていたけれどそんな必要はなさそうだった。

声優推しなるものが世の中にあるが、このオヤジさんの声が好きな人も多いのではないだろうか。

不思議な魅力に着丼前にすでにこのお店のファンになりそうな自分がいる。

カウンター上のコップ。左手にサーバー。

お水を入れて席について一息。

メニューを見てみる。

安い。物によってはサイドメニューみたいな価格。当時の学食より安いのではと思いながら眺める。

20代の頃、大手町付近のランチで1000円くらいするのが高くてつらかったけど。今ではランチ1000円なんて地方でも当たり前。ラーメン新店舗なら1000円弱でスタートの時代になった。それでこのメニュー表を見るとなんとも感慨深い。安いのが嬉しいほかに、こんな時代もあったなあなんてノスタルジックな感情も少し湧く。

裏面に大もござれり。

お店全体の雰囲気。

年季は外観同様確実に入ってるんやけど、入ってるのに綺麗さがコップや食器、テーブル、いろんな細かいところまである。

これも行ったことある人ならなんとなく伝わってるはず。

カウンターに自分のカツ丼らしきものが着丼!

でも取りに行こうかなと思ったけどなんの合図もないのでちょっと間を開けて様子を見ていると、オヤジさんがカウンターの前に回って、たくあんを用意して席まで持ってきてくださった。

このカウンターで渡すところが多かったことや、お金のやりとりを無人化してるあたりで客側がいろいろやるのかとおもったらそうでもない。

他のお客さんでは気を使って取りに行く人もいたけど「持っていくよ」「いやいや大丈夫です」「ありがとう」なんてやりとりもされていた。

改めて、着丼!

お肉も肉厚で食べごたえがある。きれいなカツ丼ではないしカツも並べられてはおらずかっ食らう感じで、衣の油にコクがある。うまうま。

厚紙みたいにぺらぺらで小麦粉食べさせてる昔に同じような値段の学食の何十倍もうまい。

このやすさとボリュームすごい。並で大体の男性でもお腹を満たせるんじゃないだろうか。

たくあんもうまくていい感じに味変できる。

次来たらこれ食べようとか思いながら食べる。次中華系狙いの予定。再訪決定。

ほぼ歩いているルート上にあるので昼飯前移動なら簡単に寄れる。

本当はここまで書いてきて、例のカウンターのお金の支払いシステムを来店前の自分のような人に見せるつもりだったけど防犯上の観点とからも見せない方が良い気がしてきた。

実際は行ってみて確認してほしい。

少なくとも偏屈なオヤジが無言でやって常連ばかりのお店というわけではなく、むしろ逆で気遣いや優しい世界があって支払いの仕組みが全くわからなかろうと何も問題はない。

常連さんばかりかなと思っていたら自分と同じく様子を伺いながらお会計をしたり注文されてる人が自分の時間帯でも半分くらいいた。

 

ファーストフード店に行く自分にとって、安くて美味いに助けられている。ただ眼の前でごちそうさまと言ってみても自分が小声なのもあるが何も反応はなく、店の奥の出口の自動ドアが開くと「。。アリガトウゴザイマシター」という店がけっこう多い。きっとそういうシステムなんだろう。かといってこちらのお店はこだわりのラーメン屋のような圧のある情熱的な接客でもない。真逆だけれどどちらの種類のお店にもあるような定型文ではなく、ただ接客に思いやりのある「会話」を誰にもしていたのが印象的だった。

安くて美味い、それだけで十分、いろいろセルフサービスが増えてシステマチックになって人間同士はスタッフやお客さん同士で狭いスペースでイライラするのを避けて無感情になってロボットになろうとしている。自分はそんなところの方が楽だし、人見知りで距離の近いのも苦手だったけど。ここは安くて美味いだけではない、おやじさんが中心になってお客さんも少し気を配る優しい空間だった。

たしかこのお店がよかったことをなんとなく言葉にするのが難しそうにしていた方も、もしかすると今自分がそのような感動したところを感じて表現しようとしていたのかも知れないなと思った。

新進気鋭のデザイナーがこんなノスタルジックな世界が好きで表現できても上辺だけ、手を抜かずにずっと何十年もやり続けた人でないとできない世界観がある。これは天然記念物・国宝級。無機物ではないので有限である。取り残されたかのようなノスタルジックな世界に触れられた気がした。安くて美味い、それだけで十分だったのにそれ以外の何か埋められていなかった、知らなかった、若しくは忘れられていたパズルのピースが見つかった。そんな気のする。短い時間だけれど面白い体験だった。

料理、価格、お店の内装、いろんなところに工夫があって。店主のこだわりがある。今風のセルフや効率化の文脈ではなく、勝手な思い込みだけれど接客嫌いでお金の精算をセルフでやらせているわけではなかった。行ってみて、行く前に特徴的だと思った支払いのシステムはお客さんに対する敬意と信頼があって成り立っており、お客さんもそれに応える。効率の一言では言い表せないものだと感じた。代えがたいお店でファンになった。

たった一回来てみて。長く続くことを願った。感動レベル。知らない店できっかけもなければ候補に入らなさそうなお店だけれど、来てみてよかった。ぜひシステマチックではない昔ながらの食堂としておすすめである。もしかすると自分と同じくどこかノスタルジックな世界を感じることがあるかも知れない。

 

追記:いやてか住所調べてGoogle Mapみたらレビュー数100超えて星も4超えてるから言わずものがなの人気店やったん。雨降ってからのと早めやったかすぐ行けたんかも。

味角屋

〒658-0012 兵庫県神戸市東灘区本庄町1丁目6−5

https://maps.app.goo.gl/gYypXx64P5fwBexS9